オプトエレクトロニクスの標準基盤のグローバルな構築を目指すIPEC

2021-04-27 出典:C114

物理学者のセオドア・メイマンが1960年にレーザーを発明して以来、オプトエレクトロニクス産業全体は数十年にわたる進歩を遂げてきました。その間、情報化時代における光通信とオプトエレクトロニクス産業の中核的な位置を決定付けるような重要な節目がいくつも訪れました。具体的には、チャールズ・クエン・カオが提唱した低損失光ファイバー、デビッド・ニール・ペインが発明したエルビウム添加ファイバー増幅器(EDFA)、およびイーサネット物理層で使用される高速光インターフェースなどはいずれも、大きな進展とされています。近年は5G、ビッグデータ、AI、およびIoTサービスが急速に発展する中、さまざまな応用シナリオが出現し、光通信インフラストラクチャを超高帯域幅と超低遅延に向けて進化させています。一方で世界中のオペレーターやインターネットベンダーの多様化する要件とソリューションに直面するオプトエレクトロニクス産業は、取り散らかったイノベーションと情報サイロの問題に立ち向かわなければなりません。

 

これはしかし、新しい機会は巨大な挑戦から生まれるということの裏返しでもあります。したがってオプトエレクトロニクス業界は、業界計画を強化し、業界の力を統合し、業界の発展を導くために、国際標準化機関を標榜することによってひとつにまとまろうとしています。これに応える形で2020年9月10日、国際フォトニクスおよびエレクトロニクス委員会(International Photonics & Electronics Committee、IPEC)が設立されました。IPECは前述の問題点に対処し、オープン、透明、公正、公平な原則に基づく、健全で持続可能な開発を促進するべく取り組んでいます。

 

IPEC設立式典では、中華人民共和国工業情報化部(Ministry of Industry and Information Technology、MIIT)通信技術委員会委員であり、中国情報通信研究院(CAICT)技術規格研究所所長の敖立(Ao Li)氏が、次のように指摘しました。「長い目で見ても、業界とエコシステム全体で健全な開発をサポートできるのは、オープンで透明な標準化団体だけです。今後もあらゆるタイプの応用シーンや要件が出現し、ネットワークはますますインテリジェントになっていくことでしょう。このため、標準プラットフォームは、すべての業界関係者の意見を取り入れ、すべての参加者に利益をもたらすものでなければなりません。」敖立氏は、開放性と平等性に忠実なIPECは、業界全体の組織や企業を非常に積極的に利するものと考えています。

 

アップストリームベンダーおよびダウンストリームベンダーと連携し、誰にとっても有益な標準プラットフォームを確立

 

IPECの創設メンバーには、CAICT、メイトゥアン(Meituan)、ファーウェイ、ファイバーホーム、ブローデックス(Broadex)、ケンブリッジ・インダストリーズ・グループ(Cambridge Industries Group、CIG)、オンシュウ・イーホワ・コネクタ(Wenzhou Yihua Connector)、ハイセンス・ブロードバンド(Hisense Broadband)、HG Genuine、ソースフォトニクス(Source Photonics)、山一電機などが名を連ねています。現在のメンバーとしては、業界をリードする研究機関、チップベンダー、コネクタコンポーネントベンダー、機器ベンダー、オペレーター、およびインターネットベンダーがあります。加えて、ライトカウンティング(LightCounting)をはじめとする著名なコンサルティング会社も、式典にも出席しています。

 

IPEC諮問委員会の委員であり、ファーウェイのデータコミュニケーション研究開発管理部門長、劉少偉(Liu Shaowei)氏は、次のように語っています。「IPEC は、業界チェーンのアップストリームベンダーおよびダウンストリームベンダーから熱い注目を集めています。その開放性と透明性は、リソースの集中化を確実に促進しながら、技術革新を強化し、業界全体での強力な開発を推し進めるものです。」

 

CCSAの伝送ネットワークおよびアクセスネットワーク技術委員会委員長であり、ファイバーホームのバイスプレジデントでもある、楊壮(Yang Zhuang)氏は、IPECへの期待を次のように述べました。「IPECは、多くの国々で光通信業界の持続可能な開発を促進します。今後IPECは、統一した通信規格システムの開発と実装に専念し、デジタル経済のグローバルな発展を強力にサポートすることを目指しています。通信技術の開発を加速するためにも、統一された規格の実装と業界のコラボレーションを通じて、業界チェーンの分断点、サイロ、および障壁を回避する必要があります。IPECは業界チェーン規格の透明性を高め、オペレーターとベンダーが協力して策定できるようにします。これにより、オペレーターは効率的かつ安全で信頼性が高く、省エネなネットワークサービスの提供が可能になります。」

 

緊急の業界要件に基づく5つの作業部会の設立

 

IPEC副会長でCAICT会員でもある趙文玉(Dr. Zhao Wenyu)氏は、IPECの組織構造と運営方法について詳しく説明するとともに、IPECでは、ネットワークとシステム、物理層インターフェースパラメータ、新しいカプセル化プロトコル、最先端のオプトエレクトロニクス技術、および相互運用性テスト手法という5分野で、技術的作業部会を設立すると指摘しています。加えて、徹底的な議論を通じて業界が合意に達し、標準ファイル、調査レポート、テストホワイトペーパーを出力し、標準の商用実装を加速することができるよう、完全な運用メカニズムが確立されます。同時にIPECは、オプトエレクトロニクス分野で経験豊富な専門家により構成される諮問委員会を設置し、提案やガイダンスを提供します。

 

ハイセンスブロードバンド(Hisense Broadband)の会長兼創設者である黄衛平(Dr. Huang Weiping)氏は、次のようにコメントしています。「光通信および相互接続において高帯域幅と低消費電力の需要が高まるにつれて、オプトエレクトロニクス技術の革新と開発の重要性は増しています。技術革新には、テクノロジーの反復を推進し、スケーリング効果を拡大するためにも、産業チェーン全体に沿った情報共有とコラボレーションが必要です。オプトエレクトロニクスおよびマイクロエレクトロニクス技術の共同開発は現在の適応の中心であるため、私たちはIPECの設立により、関連する技術と連動する開発が進んでいくものと信じています。」

 

また(国際的にも主要な光モジュールベンダーであり、IPECのコアメンバーでもある)ソースフォトニクス(Source Photonics)のチーフエンジニア、フランク・チャン(Dr. Frank Chang)氏は、次のように語っています。「業界はこれまでの数年間で400G PAM4技術をモジュールの大規模製品化に応用して、豊富な経験を積んできました。次世代の800G製品は引き続きPAM4の直接検出技術を採用し、大規模データセンターでの多様なシナリオの要件を満たすため、プラグ着脱可能な光モジュールのコスト、消費電力、性能、および保守性のメリットを最大限に活用しています。IPEC は、高速光相互接続インターフェース規格の定義を推進し、800G製品の大規模展開をサポートするために最適となるよう、業界リソースをさらに統合するための基盤として機能するものと確信しています。」

 

全てが光接続されたインテリジェントな世界を構築するための、継続的で健全な産業発展の維持

 

2020年は5G応用の到来を告げ、AIをはじめとする高帯域幅で低遅延のアプリケーションの爆発的な発展が見られました。こうした文脈の中、IPECの設立は、業界チェーン全体からの参加を呼び込むものとなるでしょう。開放感をコンセプトに、IPECはグローバルパートナーのマインドを集めることによって、持続可能な産業開発を促進します。さらに、相互信頼を特徴とする公正なプラットフォームを構築し、包括的な標準システムを開発することで、業界の障壁を打ち破ります。技術革新と意見交換を通じて、科学技術の可能性を解き放ち、業界の影響力を拡大して、オプトエレクトロニクス技術をさまざまな産業はもちろん、多くの家庭に紹介していきます。こうすることで、光ファイバーで接続されたインテリジェントな世界を活用できるようになっていくのです。

 

ブローデックス(Broadex)のCTOである丁勇(Ding Yong)氏は、将来を見据えて次のように指摘しています。「IPECの設立は、市場や技術要件の標準化を加速します。それは最終的に我々の業界に貢献し、持続可能で健全な発展を促進するでしょう。」富士通オプティカルコンポーネンツのシニアエンジニアである磯野秀樹氏は、IPECがグローバルなオプトエレクトロニクス規格をさらに統一すると考えています。「IPECの設立を積極的に支持します。当社ではIPECが今後数年間の活動で、既存のEUおよび米国の標準化機関と肩を並べる主要なグローバル標準化機関として台頭することは間違いないと考えています。」

 

数十年にわたる業界の発展と技術開発を経て、オプトエレクトロニクス分野は豊富な資源と財産を収穫してきました。IPECの設立は、IPECが革新的なアイデアを一元的に集約し、パートナーが健全な業界エコシステムを共同で構築するように導くための新たな出発点となっています。

 

出典: C114